初めに
今回は、数学オリンピック2018予選の問題の解答・解説をしていきたいと思います‼‼
ノーヒントで解いてみたいという方は、下のリンクをクリック‼‼
第28回(2018年)JMO予選の問題 (imojp.org)
また、この記事の最後に、「数学オリンピックの問題を解けるようになる方法」について解説していますので、興味がある方はそちらのほうも読んでいただければ光栄です。
注意
この記事では、日本数学オリンピック2018の問題のうち、問9から問12までしかしていません。
ほかの問題の解答・解説が気になる方は、下のリンクをクリック‼‼
それでは日本数学オリンピック予選2018の解答・解説を見ていきましょう‼‼
日本数学オリンピック予選2018 解答・解説 問9
問題:
三角形ABCの内接円が辺BC,CA,ABとそれぞれ点P,Q,Rで、∠A内の傍接円が辺BC,直線CA,ABとそれぞれ点S,T,Uで接している。三角形ABCの内心をI,直線PSと直線STの交点をD,直線PRと直線SUの交点をEとする。AI=3,IP=1,PS=2の時、線分DEの長さを求めよ。
ただしXYで線分XYの長さを表すものとする。また、⊿ABCの∠A内の傍接円とは、辺BC,辺ABの点B側への延長線、および辺ACの点C側への延長線に接する円のことを指す。
解答・解説:
図を描くと下のようになります。(本当にすいません。SとTの場所が逆になっています。PS=2のところは、PT=2と思ってください。)

ここで、下のように補助線を引きます。(図が汚くてごめんなさい。Oは三角形ABCの内接円の中心とします。)

この時、接弦定理や、円周角の定理、三角形に内接する円の性質などを駆使することで、下の図の色を付けた角度が等しくなります。

また、上の図で、青色と緑色を足したものは90°に、オレンジ色と紫色を足したものも90°になっているので、結局下のようになります。

さらに、円周角の定理から、下の水色の角度は等しくなっています。

よって、四角形EPDTは共円であり、その半径は、⊿PETにおける正弦定理より、
PT/sin(∠PET)=2/sin90°=2
と分かります。
また、⊿PETと同じ外接円を持つ⊿EPDに注目すると、先ほどの水色で示した角度が等しくなっていることから、正弦定理より、
DE/sin(∠EPD)=DE/sin(∠RPQ)=DE/sin(∠AEQ)=DE/{2×(√2)/3}=2
と分かるため、もとめるDEの長さは、

と分かります。
日本数学オリンピック予選2018 解答・解説 問10
問題:
23=8人の選手が勝ち抜きトーナメントのチェス大会に参加した。この大会では、次のようにして優勝者が決定される。
- 最初に、選手全員を一列に並べる。
- 次に、以下の操作を3回繰り返す:
列の中の選手を端から順に2人ずつ組にし、各組の選手同士で試合を行う。勝った選手は列に残り、負けた選手は列から脱落する。ただし、引き分けは発生しないものとする。
- 最後に列に残った選手を優勝者とする。
大会の前には総当たりの練習試合が行われ、その際引き分けは発生しなかった。すなわち、任意の2人組について、その2人の選手による練習試合が行われ、勝敗が決した。
いま、大会中のの勝敗が練習試合と一致すると仮定したとき、初めの選手の並べ方によっては優勝する可能性のある選手はちょうど2人であった。練習試合の勝敗の組み合わせとしてありうるものは何通りあるか。
解答・解説:
これは10番に出る問題じゃないです。(私の感触的には5番ぐらいの難しさ。10番にしては簡単すぎます。)
8人の中の優勝候補の二人をx,yとします。
また、xのほうがyより強いものとします。問題の条件から、xよりも強く、yよりも弱いような選手zが存在します。
また、このとき下のように選手x,y,zの勝敗を定めることができます。
- xは7勝1敗
- yは7勝1敗
- zは1勝7敗
これらを証明していきます。
- xが7勝1敗であることの証明
xは絶対zに負けるので、1敗は確定です。
ここで、もしxより強いz以外の人kが存在したとします。
このとき、左から順にx,y,z,kと並んでいたときに、x,y以外の人が優勝することになってしまうため、xは7勝1敗であることがわかります。
- yが7勝1敗であることの証明
yはxに負けるので、1敗は確定です。
ここで、もし、x以外でyより強い人sが存在したとします。
この時、左から順にx,z,y,sと並んだ時に、x,y以外の人が優勝することになってしまうので、yは7勝1敗であることがわかります。
- zが1勝7敗であることの証明
zは必ずxに勝つので、1勝は確定です。
もし、zがx以外で勝てる人uが存在したとします。
この時、左から順にx,y,z,uと並んだ時に、x,y以外の人が優勝することになってしまうため、zは1勝7敗しかありえないことがわかります。
また、x,y,z以外の選手の勝敗は、全く関係ないので、x,y,zの選び方は8×7×6=336通り、残りの5人の選手同士の勝敗の組み合わせは210で1024通りなので、もとめる通り数は、
336×1024=344064
より、344064通りであることがわかります。
ちょっと頭を使えば小学生でも簡単に解けちゃいそうな問題でした。
日本数学オリンピック予選2018 解答・解説 問11
問題:
以下の条件を満たす正の整数nはいくつ存在するか。
条件:nを最高位が0にならないように7進法表記した時の桁数をkとしたときk≧2である。またnは7進法であらわ明日のち、下からi桁目(i=1,2,…,k-1)を取り除いて得られる、7進法表記でk-1桁の整数をniとしたとき、

をみたす。
解答・解説:
7進法じゃなくて10進法だったとしても普通に難しいと思います。
まず、nを7進法表記にしたときの数をnと置きます。(ややこしくてすみません。)
さらに、mの下からi桁目の数をai,下i-1桁をbiと置きます。
この時、7進法表記なので、当たり前ですが、下のことが成り立ちます。
0≦ai≦6,0≦bi<7i-1
次に、niの桁数を一つ上げるためにこれを7倍して、さらに、nとの差の絶対値を考えたいと思います。
これを考えると、
|n-7ni|=|(ai7i-1+bi)-7bi|=|ai7i-1-6bi|<6×7i-1
といった風になります。
これにより、

が導かれます。
また、三角不等式と、問題の条件より、下のことが成り立ちます。

よって、以上のことより、

がわかり、さらに、n≧7k-1(nはk桁なので。)から、|k-8|<1が導かれます。
なので、k=8であることがわかります。
ここで、i=1,2,…,7について、n1,…,niの下からi桁目はai+1であり、 ni+1,…,n7の下からi桁目はaiなので、問題は0以上6以下の整数の組(a1,…,a8)であって、a8≠0および

を満たすものが何通りあるかを求めることと問題を解くことが同値であることがわかります。
また、上の式は

であり、これをもう少し変形すると、

となります。よって、これは

と変形できることから、先ほどと同様に

とすることで、長くなりましたが、結局、

を満たす(a1,…,a7)の通り数に、6をかけたものがこの問題の答えであることがわかります。(1≦a8≦6より。)
次に、以下の補題(常識)を示そうと思います。
補題
x,yをそれぞれ7でちょうどp回割り切れる数とするのとき、tx+y≡0(mod 7p+1)となる0≦t≦6が一意に存在する。
補題の証明
x=a7p,y=b7pとすると(a,bは7の倍数でない。)、tx+y=(at+b)7pなので、
at+b≡0(mod 7)
となるtが一意に存在することを示せばいいことがわかります。ここで、もし、
ai+b≡aj+b≡0(mod 7)
となるようなi≠jが存在したとします。
この時、a≡0(mod 7)なので、仮定に矛盾します。
よって、tに0から6の何を代入してもtx+yを7で割った余りが異なることがわかったので、7で割り切れるものも一意的に存在します。
これで題意は満たされました。
これを使って今から解いていきたいと思います。
まず、

と置きます。
この時、

において、右辺が7の倍数であることから、必ずC1は7の倍数でないといけないです。
ここで、いったんa1を固定したとすると、先ほどの補題で、p=0,x=1,y=5a1を代入することで、t=a2が一意に決まります。
同様に、右辺が49の倍数であることから、C2も49の倍数でないといけなく、p=1,x=14,y=C1+28a2を代入することで、t=a3が一意に決まります。
これを繰り返したら、(p=m-1,x=m7,y=Cm-1+(6-m)am,t=am+1を適用していくだけ。)C5がの倍数となる( a2,…,a6)が、a1を一つ決めることで、一意的に求まります。
また、(6-i)ai+i×ai+1≦(6-i)×6+i×6=36(i=1,2,3,4,5)より、

が導かれるため、0≦a7≦5となるようなa7が一意的にとることができます。
よって、a1のとり方は、0≦a1≦6より、7通りであることから、もとめる答えは、7×6=42により、42通りであることがわかります。
日本数学オリンピック予選2018 解答・解説 問12
問題:
整数からなる数列 a1,a2,…は任意の整数m,nに対して次のことを満たす:
- m,n≧30かつ|m-n|≧2018ならば、am+nは、am+nまたはan+mに等しい。
この時、aN+1-aN≠1となる正整数Nとしてありうる最大の値を求めよ。
解答・解説:
Nがある程度大きくなると一定になるんだろうなという予想はつきますが、それの証明が思いつきませんでした。
というわけで、数学オリンピック公式の解答を見させていただきました。
まず、bn=an-nとすると、問題の条件は下のように置き換えられます。
- 任意の30以上の整数m,nに対して、|m-n|≧2018ならば、bn+mはbnまたはbmに等しい。
ここで、bnにおいて、n≧4066で一定であることを示します。
そのために、まず下の補題を示します。
補題
整数の組(i,j,k,l)が30≦i<j<k<lを満たし、さらにbi=blかつbj,bk≠biを満たすとき、k-j≦2017が成り立つ。
補題の証明
l-iについての帰納法で示します。l-iが2019以下の時は明らかです。
ここで、l-i=pが2019以上の数とし、l-i=pで成り立つと仮定して、l-i=p+1で成立することを示します。
l-i=p+1≧2018,i≧30であり、bi+l=bi=blなので、(l-1)-(i+1)=(l-i)-2=p-1≧2018であることから、 bi+1またはbl-1は、bi+l=bi=blと人吸うことがわかります。よって、
(i+1,j,k,l),(i,j,k,l-1)
を考えることで、k-j≦2017が帰納的に示されました。
次に私が示したかったbnがnが十分大きかった時に一定になることを示そうと思います。
s,tを共に2018以上で、s-t≧2018が成り立つとします。
この時、bs+tはbsまたはbtと等しいです。
これを繰り返し用いることで、
- bs+t=bsのとき
bs+t=b2s+t=b3s+t…
- bs+t=btのとき
bs+t=bs+2t=bs+3t…
が導かれます。
また、u>s+t,bu≠bs+tとなるようなuが存在するとき、bn≠bs+tかつn≧u+2018となるnが存在したとすると、 bm=bs+tかつm>nなるものが取れるので、(s+t,u,n,m)に補題を適用させると、矛盾します。
よって、 bnはn≧u+2018で一定になることが示されました。
また、u>s+t,bu≠bs+tとなるようなuが存在しないときは、普通にs+tで一定になります。
つまり、bnが途中から一定になることが示されたので、その時の値をxと置きます。
ここで、b30の値によって場合分けして考えようと思います。
b30≠xの時
n≧2048かつbn≠xとなるような整数nが存在するとすると、 bn,bn+30,bn+60,…は絶対xと等しくなることがないため、bnは、n≧2048で一定になります。
b30=xの時
- 31≦n≦2048となる整数nであって、bn≠xを満たすものが存在するとき
補題より、bm≠xとなるmはm≦n+2017≦4065を満たすので、bnはn≧4066で一定になります。
- b31=b32=…=b2048=xとなる場合
b30=xより、b2078=xがわかります。
また、2078-2018=60なので、2078+30≦n≦2138でbn=xとなります。
あとはこれを同様に繰り返していくだけで、n≧2139以上でbn=xとなることが示せるので、この場合は2108で一定になります。
以上のことから、bnはn≧4066で一定になることがわかりました。
問題のN≦4065であり、逆にn=1,2…について

と定めると、このanは問題で与えられた条件を満たすため、もとめる答えは4065であるとわかります。
これで、数学オリンピック2019予選の解答・解説は完了です‼
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数学オリンピックの問題を解けるようになるには
正直言って、数学オリンピックの問題ぐらいだったら(国際数学オリンピックの最終問題とか本選の最終問題とかを除いて)大体パターン化されているので、勉強さえしておいたら何とかなります。
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パーフェクトマスターシリーズ
これは、特定の分野をしっかり固めたい方にお勧めです。
大事な問題だけがセレクトされているので、その分野の問題をしっかり鍛えることができます。
初等整数を鍛えたい方にオススメ‼‼
これは、初等整数をマスターしたい方にお勧めです。
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下の本は、代数、解析を鍛えたい方におススメの本です
数学オリンピックの問題の中でも、「絶対解けるか!!」みたいなレベルの問題って稀にあるじゃないですか。
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↓興味がある方はこちら‼‼
終わりに
いかがでしたか。
ほかにも数学オリンピックの解説している記事もありますので、そちらのほうも見ていただければ光栄です‼‼
それでは次の記事で‼
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